はじゃまソフト「夏の終わりのニルヴァーナ」感想

ご無沙汰してるような気がしますが生きております。
暇を見つけては積みゲーを消化していましたが、ぱじゃまソフトが今年の1月に発売した「夏の終わりのニルヴァーナ」を先日クリアしたので感想とか書いてみようかと。
プリズムアークを送り出したスタッフによる作品であり、発売前から期待していました。

主題というかテーマは、この手のエロゲーにありがちな「輪廻転生」ですが、それをよく描き切った作品でした。ヒロインたちはすべて死者であり、魂に問題を抱えている存在。主人公のカルマは閻魔の息子であり、ヒロインたちと学園生活を送って交流を深め、彼女たちに裁きを与えることを命じられる…
舞台はヒロインたちが住んでいた町を元に作られた擬似的な世界。舞台設定とかエンジェルビーツを思い浮かべてもらえればそんな感じです。
正直前半の共通パートはだるかった面もありましたが、ちょいちょい伏線が張られているので油断なりません。

・ミハヤルート
死にたがりの少女。作中では事あるごとに自殺しようとしていますが、すでに死んでるので当然死ねないわけです。見かねたカルマは、彼女がそれ程までに死に執着する理由を解明するためにミハヤの過去を調べていきます。重なる不幸によって心を閉ざし、愛情を向けてくれていた人の気持ちにも気が付かず自殺をしてあの世に来てしまったという事実に、ミハヤはどう向き合っていくのか…
ミハヤの育ての親である叔母さんへの思いを描いたシーンが印象的でした。

・ノノ、レイアルート
生前お嬢様だったレイア。そんな彼女が飼っていた犬がノノ。ノノはレイアの為に、人間になりたいという願いをかなえた存在。お互い助け合いながら生きてきた彼女たちですが、レイアの中には他人を拒絶してしまう感情があります。レイアの中にあるこの感情を過去の記憶を探りながらどうやって解決していくのか、という点を軸に話が進んでいきます。
ラストシーンは必見。お手元にハンカチを。

・ナユルート
常に活発そうに見える少女ですが、実は生前は体が弱く、余命幾ばくも無い状態。死にたがりのミハヤとは反対に、生きたいという願いを心に秘めており、その事からミハヤに反発する姿も見られます。幼い頃から病弱で、ほとんどの人生を闘病に費やしてきたナユ。そんな人生に価値を見出せないナユに対し、カルマはとある裁きを与えようとするものの…
他のヒロインとはちょっと趣向が異なるお話。ナユは非常に強い心をもったヒロインでしたね。

・久遠ルート
カルマ曰く1200年来の幼なじみ。カルマや奪衣婆と同じ天人らしいが…よくある幼なじみキャラといった感じで、カルマと他のヒロインが仲良くしている際には嫉妬をしたり、カルマに制裁を与えたりするのもありがちな描写だなーという印象を受けていました。
しかし、カルマは自分がなぜ久遠と幼なじみなのか、どのようにして出会ったのかを覚えていませんでした。そして時折夢に見る久遠との描写が一体何を意味するのか、それを解明するために、カルマは過去の自分の記憶を蘇らせようとします…
そこから物語は一気に奈良時代末期へとワープします。長岡京が遷都された延暦年間あたりです。このあたり日本史の知識があるとわりと理解しやすく、逆にないと厳しいかもしれません。自分は高校まで日本史をやっていたので結構楽しめましたがこのあたり好き嫌いが別れてしまうかもしれませんね。この久遠ルートで、実は4人のヒロインたちがかつてカルマと縁を持っていた事、これまでのルートで彼女たちの魂に絡み付いていた業がなぜあそこまで大きくなってしまったのか、そして久遠の正体が明かされる事になります。
他ルートから急展開で一気に奈良時代後期(延暦期)という設定になるため、ちょっと面食らうかも。
このルートによって久遠が1200年前、カルマが人間道に来たときに逢っていた人間だと判明します。しかし、カルマたちとの交流の結果、彼女の存在がやがて問題になってしまい、カルマはその解決のために久遠を裁く事命じられます。果たしてカルマの下した決断とは…

いやーね、もう、ラスト部分は号泣でしたね。「夏の終わりのニルヴァーナ」、この作品は久遠とカルマの物語だったんだなーと。他のヒロインたちに関しても、輪廻転生の中で縁があったことや個別ルートでは描ききれなかった業の正体が明らかとなったりと、この物語の中核となる要素が多く散りばめられています。

正直な所、前半の共通パートやミハヤルートあたりまでは可もなく不可もなくといった印象だったんですが、良い意味で期待を裏切ってくれましたねー。


プリズムアークのスタッフが制作するという事で、メーカーとしても結構気合いの入った作品だったんじゃないかと。ちょいちょいプリズムアークのネタ混ざってましたねw
ただ、BGMをまるまる流用するのはさすがにどうかと…贖罪のラプソディーとか(笑)


惜しむらくはエロシーンの描写ですかね。各ヒロインとカルマがくっつくのはifの話として割り切って後付けにした点、これはよかったと思います。根底としてこの物語は久遠とカルマの話ですから。とはいえ、折角エロゲーとして作るわけですし、ifの話として割り切るのですからもう少し濃い描写が欲しかった所。各ヒロインが魅力的なだけに余計勿体ないなぁと。


仏教的なお話が出てきたり、ちょっと歴史的な知識が必要だったりでクセのある作品かもしれませんが、ここ数年のシナリオゲーの中では個人的にトップクラスの出来だったんじゃないかと思います。常にハンカチ持ってましたw


これほどの良作であるにもかかわらず、知名度的にもいまいち盛り上がっていないのも寂しいですねぇ。個人的にはかなりツボに入った作品でした。